
【2025年11月最新版】レーザーテック(6920)2026年6月期第1四半期決算を徹底解説!AI半導体需要で業績急回復の理由とは
はじめに
半導体製造装置業界で独自の地位を築くレーザーテック。2025年10月31日に発表された2026年6月期第1四半期決算は、多くの投資家を驚かせる内容でした。売上高は前年同期比で約5割増、利益はなんと2倍以上という驚異的な数字が並んでいます。
「半導体市場は本当に回復しているの?」「この好業績は一時的なもの?」そんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。この記事では、レーザーテックの最新決算内容を分かりやすく解説し、好調な業績の背景にある要因や今後の見通しまで、投資判断に役立つ情報を余すところなくお届けします。
半導体業界に詳しくない方でも理解できるよう、専門用語はできるだけ噛み砕いて説明していきますので、ぜひ最後までお読みください。
2026年6月期第1四半期決算の注目ポイント
売上高・利益ともに大幅増を達成
レーザーテックが発表した2025年7月から9月までの第1四半期決算は、まさに「復活」を印象づける内容でした。売上高は541億7,100万円で、前年同期と比べて47.5%という大幅な増加を記録しています。これは約1.5倍の売上を達成したということです。
利益面ではさらに顕著な改善が見られます。営業利益は267億2,800万円で前年同期比67.9%増、経常利益と最終利益に至っては2.1倍という驚異的な伸びを示しました。最終利益(親会社株主に帰属する当期純利益)は190億5,700万円に達し、収益力の高さを改めて証明する結果となっています。
売上が約5割増えたのに対して利益が2倍以上になったということは、単に売上が増えただけでなく、より儲かる製品が売れたり、効率的な経営ができたりしたことを意味します。これは企業の質的な成長を表す重要なサインです。
収益性の大幅な改善が示すもの
注目すべきは、収益性を示す各種指標の改善です。売上営業利益率は49.3%に達しました。これは売上高の約半分が営業利益として残るという、極めて高い収益性を意味します。前年同期の43.3%から6.0ポイントも改善しており、同社の製品がいかに高付加価値であるかを物語っています。
一般的な製造業の営業利益率は5~10%程度と言われていますので、レーザーテックの49.3%という数字がいかに突出しているかがお分かりいただけるでしょう。これは同社が持つ技術の独自性と、競合が少ない市場環境を反映しています。
売上経常利益率も50.1%と、前年同期の34.6%から15.5ポイントもの大幅改善を見せました。この改善幅の大きさは、本業の収益力向上に加えて、財務面でも効率的な運営ができていることを示しています。
通期計画に対する順調な進捗
レーザーテックは2026年6月期通期の業績予想として、売上高2,000億円、営業利益850億円、最終利益600億円を掲げています。第1四半期の実績は、この通期計画に対して売上高で27.1%、営業利益で31.4%、最終利益で31.8%の進捗率となりました。
一見すると「まだ3割程度」と感じるかもしれませんが、実はこの数字は非常に好調な滑り出しを意味しています。過去5年間の平均的な第1四半期の進捗率は12.3%程度ですから、今回の進捗率はその2倍以上のペースなのです。
半導体製造装置業界では、大型の設備投資案件の納入時期によって四半期ごとの業績にばらつきが出やすいという特徴があります。それでもこの順調な滑り出しは、年間を通じた需要の強さを予感させる内容と言えるでしょう。
市場予想を大きく上回るサプライズ
今回の決算で特に市場を驚かせたのは、アナリストによる事前予想を大きく上回ったことです。市場コンセンサス(複数のアナリストによる予想の平均値)では経常利益が170億円程度と見込まれていましたが、実際の結果は271億4,100万円と、約60%も上回る内容でした。
こうした「ポジティブサプライズ」は株式市場で好感され、発表翌日の株価は大きく上昇しました。投資家たちが予想していた以上に事業環境が改善していることが確認されたためです。
予想を上回った背景には、 「AI関連半導体」 の需要拡大が想定以上のペースで進んでいることや、顧客である半導体メーカーの設備投資意欲が高まっていることなどが挙げられます。
AI半導体ブームが追い風に!業績回復の背景を探る
EUV関連装置の需要が急拡大
レーザーテックの業績回復を牽引しているのは、 「EUV(極端紫外線)リソグラフィ」 という最先端の半導体製造技術に関連する検査・測定装置です。EUVは、より微細で高性能な半導体チップを作るために不可欠な技術で、特に最先端のAIチップや高性能プロセッサの製造に使われています。
レーザーテックは、このEUV製造プロセスで使用される 「フォトマスク」 (半導体の回路パターンを転写するための原版のようなもの)の欠陥を検査する装置で、世界的にほぼ独占的な地位を築いています。競合他社が簡単には真似できない高度な技術を持っているため、EUV半導体の生産が増えれば増えるほど、レーザーテックの装置が必要とされるのです。
2024年から2025年にかけて、 「生成AI」 ブームの本格化により、AIの計算処理を担う高性能チップの需要が爆発的に増加しています。これらのAIチップの多くは最先端のEUV技術を使って製造されるため、レーザーテックの検査装置への需要も連動して急増しているというわけです。
半導体メーカーの設備投資サイクルが回復
半導体業界には「シリコンサイクル」と呼ばれる景気の波があります。2022年から2023年にかけては、コロナ禍の特需が一巡したことや世界経済の減速懸念から、半導体市場は調整局面に入っていました。多くの半導体メーカーが設備投資を抑制し、製造装置メーカーにとっては厳しい時期が続いていたのです。
しかし2024年後半から状況が一変しました。AI関連需要の急拡大に加えて、スマートフォンやデータセンター向けの需要も底を打って回復基調に転じています。さらに、各国政府が半導体産業を戦略的に重要視し、国内生産能力の強化を支援する動きも広がっています。
こうした環境変化を受けて、主要な半導体メーカーは再び積極的な設備投資に転じています。特に台湾のTSMC(台湾積体電路製造)や韓国のサムスン電子といった大手ファウンドリ(半導体受託製造会社)は、最先端プロセスの生産能力拡大に巨額の投資を行っています。レーザーテックはこの設備投資拡大の恩恵を直接受ける立場にあるのです。
技術的な独自性が高い参入障壁を形成
レーザーテックの強みは、単に市場環境が良いだけではありません。同社が手がけるEUVマスク欠陥検査装置は、開発に長年の研究開発と膨大なノウハウの蓄積が必要な製品です。
EUVマスクの欠陥は、髪の毛の太さの数千分の一というナノメートル(10億分の1メートル)レベルの微細なものです。こうした極小の欠陥を高速かつ高精度で検出するには、光学技術、画像処理技術、精密機械技術など、多岐にわたる先端技術の統合が求められます。
この技術的な難易度の高さが、新規参入を極めて困難にしています。仮に競合企業が参入を試みても、技術開発に数年から十年単位の時間がかかるうえ、既に市場で実績を積んでいるレーザーテックの製品に対抗できる性能を実現するのは容易ではありません。
こうした 「技術的な堀」 (競合他社が簡単には乗り越えられない障壁)があるからこそ、レーザーテックは高い利益率を維持しながら安定的に成長できているのです。
グローバル展開と顧客基盤の拡大
レーザーテックの顧客は、世界中の主要な半導体メーカーやマスクメーカーです。地理的にも、台湾、韓国、米国、欧州、日本と広範囲に及んでおり、特定地域への依存度が低いことも強みとなっています。
近年は、米国や欧州、日本などで半導体の国内生産を強化する動きが活発化しており、これまで半導体製造の中心だったアジア以外の地域でも新たな需要が生まれています。こうした地政学的な変化も、レーザーテックにとっては事業機会の拡大につながっています。
また、既存顧客の生産能力拡大だけでなく、新たに半導体製造に参入する企業や、これまで旧世代の技術を使っていた企業が最新のEUV技術へ移行する動きも、追加的な需要を生み出しています。
新製品「ACTIS A200HiTシリーズ」が示す競争力の強化
生産性を大幅向上させる新製品の登場
レーザーテックは2025年10月31日、決算発表と同時に新製品 「ACTIS A200HiTシリーズ」 の発表も行いました。この新製品は、EUVマスクの品質管理における生産性を大幅に向上させる次世代機です。
ACTIS A200HiTシリーズの最大の特徴は、検査のスループット(処理能力)が従来機と比べて大幅に向上していることです。半導体製造において、検査工程は品質確保に不可欠である一方、生産全体のボトルネック(制約要因)になりがちです。検査が遅ければ、それだけ全体の生産効率が下がってしまうのです。
新製品は、より高速な検査を実現することで、顧客である半導体メーカーの生産効率向上とコスト削減に貢献します。半導体の製造コストが高騰している現在、こうした生産性向上ツールへのニーズは非常に高まっています。
技術的優位性の維持が長期成長の鍵
半導体業界では技術の進化スピードが非常に速く、常に最新の技術を提供し続けなければ競争力を維持できません。レーザーテックが定期的に新製品を投入できているということは、研究開発力が高く、技術的優位性を保ち続けられていることの証明です。
同社は売上高の一定割合を継続的に研究開発に投資しており、次世代技術の開発にも積極的に取り組んでいます。こうした先行投資が、将来の成長を支える新製品として結実しているのです。
また、新製品の投入は既存顧客の設備更新需要を喚起する効果もあります。より高性能な新型機が登場すれば、競争力を維持したい顧客は旧型機からの置き換えを検討するようになります。これが 「リプレース需要」 として、継続的な売上の源泉となるのです。
顧客との長期的な関係構築
レーザーテックのビジネスモデルのもう一つの強みは、装置の販売だけで終わらない点にあります。納入後のメンテナンスサービス、アップグレード、消耗品の供給など、長期にわたる顧客との関係が続きます。
新製品の開発段階から主要顧客と密接に連携し、顧客のニーズを製品に反映させることで、より市場に受け入れられやすい製品を開発できます。こうした 「共創」 のアプローチが、顧客ロイヤルティの向上と競合他社の参入障壁の強化につながっています。
ACTIS A200HiTシリーズも、こうした顧客との対話の中で生まれた製品であり、市場の実際のニーズに基づいて開発されたものです。そのため、発売後の受注も順調に進むことが期待されます。
今後の見通しと投資家が注目すべきポイント
通期業績達成の可能性は高い
第1四半期の好調な実績を受けて、市場では通期業績予想の上方修正を期待する声も出ています。ただし、レーザーテックは現時点では通期予想を据え置いており、慎重な姿勢を維持しています。
これは同社の保守的な経営スタイルを反映したものと考えられます。半導体製造装置業界では、大型案件の納入時期のずれや顧客の投資計画の変更など、不確実性が高い要素も多いため、確実性が高まるまでは予想を引き上げないという慎重なアプローチを取っているのでしょう。
しかし、第1四半期の進捗率の高さと、足元のAI関連需要の強さを考慮すれば、通期目標の達成可能性は高いと見られます。むしろ、第2四半期以降の実績次第では、上方修正の可能性も十分にあると言えるでしょう。
AI需要の持続性がカギ
今後の業績を左右する最大の要因は、AI関連半導体の需要がどこまで持続するかという点です。現在の生成AIブームは本物なのか、それとも一時的な過熱なのか、市場では意見が分かれています。
ただし、主要なテクノロジー企業やクラウドサービス事業者は、AIインフラへの投資を今後数年間にわたって継続する計画を表明しています。マイクロソフト、アマゾン、グーグル、メタといった企業は、それぞれ年間数兆円規模の設備投資を計画しており、その多くがAI関連のデータセンターやチップに向けられます。
こうした巨大企業による継続的な投資が見込まれる限り、半導体製造装置への需要も底堅く推移すると考えられます。短期的な変動はあっても、中長期的なトレンドとしてはAI需要の拡大が続く可能性が高いでしょう。
地政学リスクと供給網の変化
注意すべきリスク要因としては、地政学的な緊張の高まりがあります。米中対立の影響で、中国向けの先端半導体製造装置の輸出には規制がかけられています。レーザーテックの製品も、最先端のものについては中国への輸出が制限される可能性があります。
一方で、こうした制限は欧米や日本、台湾、韓国といった同盟国・友好国での半導体生産強化を促す側面もあります。実際、米国では「CHIPS法」により半導体産業への大規模な補助金が用意され、国内生産の拡大が進んでいます。日本でも同様の支援策が実施されており、熊本県のTSMC工場など、国内での最先端半導体生産が拡大しています。
こうした供給網の再編成は、短期的には不確実性をもたらしますが、中長期的には新たな需要機会を生み出す可能性もあります。レーザーテックとしては、グローバルな顧客基盤を持つ強みを活かして、こうした変化に柔軟に対応していくことが求められます。
株価バリュエーションと投資判断
好調な業績を反映して、レーザーテックの株価も上昇傾向にあります。ただし、同社株は成長期待を織り込んで高いバリュエーション(株価評価)で取引されることが多く、PER(株価収益率)などの指標では割高に見えることもあります。
投資判断においては、単に現在の業績だけでなく、今後数年間の成長ストーリーがどこまで実現可能かを見極めることが重要です。AI需要の持続性、EUV技術の普及拡大、新製品の市場浸透など、複数の成長ドライバーが同時に機能すれば、現在の株価水準も正当化されるでしょう。
一方で、半導体市場の循環性(好不況の波)を考慮すると、いつまでも右肩上がりの成長が続くわけではありません。長期投資の視点を持ちつつ、業績動向や市場環境の変化には注意を払う必要があります。
注目すべき今後の指標
投資家が今後注目すべきポイントとしては、以下のような指標が挙げられます。
第2四半期以降の受注状況です。製造装置ビジネスでは、受注残(バックオーダー)が将来の売上を示す先行指標となります。受注が堅調に推移しているかどうかは、需要の持続性を判断する重要な材料です。
主要顧客の設備投資計画も重要です。TSMCやサムスン電子などの大手半導体メーカーが発表する投資計画は、レーザーテックの受注に直結します。これらの企業の決算説明会や投資家向け資料には注目しておくべきでしょう。
新製品の販売動向も見逃せません。ACTIS A200HiTシリーズの市場投入が順調に進み、受注につながっているかどうかは、技術競争力の維持を確認するうえで重要な指標となります。
さらに、為替動向も業績に影響を与えます。レーザーテックの売上の多くは海外向けであり、円安は業績にプラスに働く傾向があります。逆に円高が進めば、円建てでの売上や利益が目減りする可能性があります。
まとめ
レーザーテックの2026年6月期第1四半期決算は、AI半導体需要の拡大を背景に、売上高47.5%増、最終利益2.1倍という力強い回復を示す内容でした。半導体業界の設備投資サイクルが上向きに転じる中、EUVマスク検査装置という独自の技術領域で圧倒的な競争優位性を持つ同社は、この追い風を最大限に活かしています。
収益性の高さも際立っており、売上営業利益率49.3%という数字は、同社のビジネスモデルの強固さを物語っています。技術的な参入障壁が高く、競合が限られる市場環境が、この高収益体質を支えているのです。
新製品ACTIS A200HiTシリーズの投入は、技術的優位性を維持し続けるための継続的な研究開発努力の成果であり、今後の成長をさらに加速させる可能性を秘めています。既存顧客の設備更新需要と新規顧客の開拓の両面で、新たな売上機会を創出することが期待されます。
今後の見通しとしては、AI関連需要の持続性が最大の焦点となります。主要テクノロジー企業による大規模な投資計画が実行される限り、半導体製造装置への需要も底堅く推移するでしょう。地政学リスクや市場の循環性といった不確実性はあるものの、中長期的な成長トレンドは維持される可能性が高いと考えられます。
投資判断においては、高いバリュエーションと成長期待のバランスを慎重に見極める必要があります。短期的な株価変動に一喜一憂するのではなく、同社の技術的優位性と市場環境の構造的変化を理解したうえで、長期的な視点での投資を検討することが望ましいでしょう。
第2四半期以降の業績動向、主要顧客の投資計画、新製品の受注状況など、継続的にウォッチしていくべきポイントは多くあります。これらの情報を丁寧に追いながら、レーザーテックの成長ストーリーがどこまで実現していくのか、注目していきたいところです。
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