
2026年2月の銀相場|急騰と急落を繰り返す市場の背景と専門家の見解

はじめに
銀の価格が2025年に大きく上昇したことは、投資や経済に関心をお持ちの方なら耳にされたかもしれません。実は2025年、銀価格は約147%という驚くべき上昇を記録し、多くの金融関係者を驚かせました。そして2026年に入ってからも、銀相場は激しい値動きを続けています。
この記事では、2026年2月現在の銀相場がどのような状況にあるのか、なぜこれほどまでに価格が変動しているのか、そして専門家たちはこれからの銀価格をどう見ているのかについて、できるだけ分かりやすくご紹介していきます。
銀市場の動きを理解することで、経済全体の流れや、私たちの生活に関わる産業の動向も見えてくるはずです。それでは一緒に、銀相場の現状を見ていきましょう。
2026年2月の銀価格:激しい値動きの中で何が起きているのか
現在の銀価格の水準
2026年2月6日現在、銀の価格は1オンス(約31.1グラム)あたり約75ドル前後で取引されています。この価格は、1年前の2025年2月と比べると実に2倍以上という水準です。1年前には1オンス32ドル程度だったことを考えると、いかに大きな上昇があったかがお分かりいただけるでしょう。
ちなみに、「金・銀比価」と呼ばれる指標があります。これは金の価格を銀の価格で割ったもので、金1オンスを買うのに銀が何オンス必要かを示します。現在この比価は約57対1から66対1の範囲で推移しており、歴史的に見ると比較的バランスの取れた水準にあると言えます。
2025年の歴史的な価格上昇
2025年は銀にとって記憶に残る年となりました。年初には1オンス約29ドルだった銀価格は、年末には72ドルを超える水準まで上昇しました。そして2026年1月下旬には、一時的に 「109ドル」 という史上最高値圏に達したのです。
この上昇ペースは、同じ貴金属である金の上昇率(約67%)を大きく上回るものでした。銀が金よりも価格変動が大きい特性を持っているとはいえ、これほどの上昇は多くの専門家の予想を超えるものだったと言えます。
2026年1月末からの急激な調整
しかし、価格が上がり続けることはありませんでした。2026年1月末、銀価格は突如として急落します。きっかけとなったのは、アメリカの新政権が発表した金融政策人事でした。市場では金融引き締めが継続されるのではないかという懸念が広がり、銀の先物市場では1日で約30%もの下落を記録しました。
これは1980年以来、実に46年ぶりという大規模な下落でした。その後2月に入ってからは、上昇と下落を繰り返す不安定な値動きが続いています。ある日は7%上昇し、次の日には10%下落するといった具合です。
こうした激しい値動きの背景には、取引所が証拠金(取引の担保として預けるお金)の要件を引き上げたことも影響しています。資金に余裕のない小規模な投資家が、保有していた銀を売却せざるを得なくなったことで、価格変動がさらに大きくなったのです。
銀価格が注目される理由:需要と供給のバランスが崩れている
供給が需要に追いつかない状況
銀価格がこれほど上昇している最も大きな理由は、需要に対して供給が追いついていないことにあります。実は銀市場は、 「5年連続で供給不足」 という深刻な状況にあるのです。
世界中の銀鉱山から生産される銀の量は、2010年頃には約10.7億オンスでしたが、2024年には約10.3億オンスまで減少しています。一方で需要は2024年に推定12億オンス以上に達しており、年間で約1.6億から2億オンスもの不足が生じているとされています。
なぜ生産が増えないのでしょうか。それは、新しい銀鉱山を開発するには 「7年から15年」 という非常に長い時間がかかるためです。価格が上がったからといって、すぐに生産を増やせるわけではないのです。実際、世界最大の銀生産企業であるフレズニージョ社は、2026年の生産目標を引き下げることを発表しました。
産業用途での需要が急増している
銀は装飾品や投資対象としてだけでなく、実は私たちの生活に欠かせない工業製品にも広く使われています。そしてこの工業需要が、近年急速に拡大しているのです。
太陽光発電パネル
最も大きな需要源となっているのが太陽光発電パネルです。銀は電気伝導性に優れているため、太陽光パネルの内部回路に使用されています。1枚のパネルには約0.64オンスの銀が使われており、世界中で年間数億枚のパネルが設置されているため、膨大な量の銀が必要となります。
2024年には、太陽光パネル製造業者が世界の銀供給の 「25%以上」 を消費したと推定されています。脱炭素化の流れが世界的に加速する中、この需要は今後さらに増えていくと予想されています。
電気自動車(EV)
電気自動車も銀の重要な需要源です。電気自動車は従来のガソリン車に比べて約2倍の銀を使用します(1台あたり約1.3オンス)。センサー、高電圧配線、電力管理システムなど、様々な部分で銀が活躍しているのです。
世界的にガソリン車から電気自動車への移行が進んでおり、EV関連の銀需要は2025年に推定20%増加したとされています。
AI・データセンター
新たな需要源として注目されているのが、AIとデータセンター分野です。高性能なコンピューターや大規模なデータセンターでは、高効率な電気部品や熱管理システムが必要となり、そこでも銀が使われています。AI技術の発展に伴い、この分野からの需要も今後増加していくと見られています。
金融政策が銀価格を支える
銀価格を後押ししているもう一つの要因が、金融政策の変化です。2025年から2026年にかけて、アメリカの中央銀行(FRB)は金利を引き下げる方向に動いています。
金利が下がると、お金を銀行に預けていても得られる利息が減ります。すると投資家は、利息を生まない銀のような資産を保有することへの抵抗感が薄れるのです。また、金利が下がるとドルの価値が相対的に下がる傾向があり、ドル建てで取引される銀の価格は上昇しやすくなります。
2026年も複数回の利下げが予想されており、これは銀価格にとって追い風となる環境と言えます。
専門機関は銀価格の先行きをどう見ているのか
主要金融機関の価格予測
銀の価格が今後どうなるのか、世界の主要な金融機関や専門家たちも様々な予測を発表しています。ここでは代表的な見解をご紹介します。
世界銀行の予測
世界銀行は比較的保守的な見方をしており、2026年の銀価格を1オンス41ドル程度と予想しています。工業需要の伸びは認めつつも、価格の急騰は持続しにくいという慎重な立場です。
JPモルガンとHSBC
アメリカの大手投資銀行JPモルガンは58ドル、イギリスのHSBCは68.25ドルという予測を出しています。両行とも、構造的な供給不足が続くことを理由に、価格は高止まりすると見ています。
バンク・オブ・アメリカの興味深い予測
バンク・オブ・アメリカは、基本シナリオとして年平均65ドルを予想する一方で、 「強気シナリオでは最高309ドルに達する可能性もある」 という驚くべき見解も示しています。ただし同行の専門家は、1月末の急落後、短期的には60ドルから70ドルの範囲が適正価値に近いとコメントしています。
シティグループとゴールドシルバー社
シティグループは2026年3月までに100ドルに達すると予測しています。また、貴金属専門のゴールドシルバー社のアナリスト、アラン・ヒバード氏は 「175ドル超」 という強気の見通しを発表しており、構造的な供給不足が深刻化すると主張しています。
専門家の間でも意見が分かれる理由
このように予測に大きな幅があるのは、銀市場が複雑な要因に影響されるためです。工業需要がどこまで伸びるか、新しい技術によって銀の使用量が減るかどうか、金融政策がどう変化するか、地政学的な不安定さがどの程度続くか…こうした多くの不確実性があるため、専門家の間でも見解が分かれるのです。
ただし、多くの機関に共通しているのは、 「短期的な変動はあっても、構造的な供給不足が続く限り、銀価格は比較的高い水準を維持するだろう」 という見方です。
銀価格に影響を与える主な要因:これから注目すべきポイント
地政学的な不安定さ
世界的な政治・経済の不安定さも、銀価格を動かす重要な要因です。銀は金と同様に、不安な時代の 「安全資産」 としての側面も持っています。
現在、米中間の貿易摩擦、中東の緊張、ウクライナ情勢など、世界には様々な不安定要因があります。また、主要な銀産出国であるメキシコでは資源の国有化に関する議論があり、ロシアは制裁の影響で生産拡大が難しい状況です。
こうした地政学的リスクが高まると、投資家は安全資産を求める傾向があり、銀への需要が高まることがあります。
投資家の動向
2025年は、銀への投資需要が復活した年でもありました。銀に投資する代表的な金融商品であるETF(上場投資信託)の一つ、iシェアーズ・シルバー・トラスト(SLV)には、大量の資金が流入しました。
SLVの運用資産は、2025年初めの134億ドルから年末には約380億ドルへと急増し、180%もの上昇を記録しました。これは同期間のアメリカ株式市場の代表的な指数であるS&P500を大きく上回る成績です。
興味深いことに、2026年1月末の急落時にも、多くの個人投資家が 「下がったときこそ買いのチャンス」 と考えて購入を続けたようです。このように、銀への関心が高まっていることも価格を支える要因となっています。
金・銀比価という重要な指標
専門家がよく参考にする指標に 「金・銀比価」 があります。これは金1オンスの価格を銀1オンスの価格で割ったもので、金と銀の相対的な価値関係を示します。
歴史的に見ると、この比価は大きく変動してきました。古代ローマでは15対1、1980年には17対1という低い水準でしたが、2020年3月のコロナパニック時には125対1という極端な水準まで上昇しました。2025年4月には100対1を超え、「銀が金に対して極端に割安」という状況でした。
その後、銀価格の急上昇により、2026年1月には比価は57対1まで圧縮されました。これは長期的な平均に近い水準です。専門家の中には、 「比価が80対1を超えると銀が割安」 という目安を使う方もいます。今後この比価がどう動くかも、銀相場を見る上での重要なポイントとなります。
テクノロジーの進歩による影響
一方で、技術革新が銀需要を減らす可能性もあります。例えば太陽光パネルのメーカーは、高騰する銀のコストを削減するため、パネル1枚あたりの銀使用量を減らす研究開発を進めています。
もし画期的な技術が開発されて、銀をあまり使わずに同じ性能の製品が作れるようになれば、工業需要は減少するかもしれません。スイスの金融機関UBSは、 「現在の高価格は、産業界が銀の使用を最適化するインセンティブとなる」 と指摘しています。
ただし、現時点では銀の優れた電気伝導性と熱伝導性を完全に代替できる素材は見つかっておらず、当面は強い需要が続くと見る専門家が多数派です。
銀投資を考える際に知っておきたいこと
銀特有の高いボラティリティ
銀について理解しておくべき最も重要なことは、 「価格変動が非常に激しい」 という特性です。2026年1月には1日で30%下落し、その数日後には7%上昇し、さらに翌日には10%下落するといった激しい動きを見せました。
スイスの金融機関UBSは、銀のボラティリティ(価格変動の大きさ)を 「60%から120%」 と分析しています。これは株式市場の典型的なボラティリティ(15%から25%程度)の数倍に相当します。
こうした激しい値動きは、短期的に見ると心理的な負担が大きくなります。価格が急落したときに慌てて売却してしまうと、その後の回復を逃してしまう可能性もあります。銀に関心を持つ場合は、こうした特性を十分に理解しておく必要があります。
長期的な視点の重要性
専門家の多くが指摘するのは、銀への関心を持つ際は 「長期的な視点」 が重要だということです。短期的には大きく上下しても、構造的な供給不足と工業需要の増加というトレンドは、数年単位で続く可能性が高いとされています。
実際、銀価格は過去にも何度も大きな調整局面を経験してきましたが、長期的に見ると上昇トレンドを維持してきました。2020年3月のコロナショック時には一時的に大きく下落しましたが、その後数ヶ月で47%も上昇しました。
投資手段の選択肢
銀に関心を持つ方法はいくつかあります。
現物の銀
銀地金(バー)やコイン(アメリカンシルバーイーグルなど)を実際に購入して保管する方法です。実物を手元に置けるという安心感がありますが、保管場所の確保や盗難リスクへの対策が必要です。また、購入時には製造コストなどが上乗せされるため、市場価格より高い価格での購入となります。
銀のETF
iシェアーズ・シルバー・トラスト(SLV)のようなETFは、証券口座で銀の価格に連動する投資ができる商品です。実物を保管する必要がなく、売買も株式と同じように簡単にできます。ただし、年間0.5%程度の管理費用がかかります。
銀鉱山会社の株式
銀を採掘する会社の株式に投資する方法もあります。銀価格が上昇すると、鉱山会社の利益はさらに大きく増える傾向があるため、銀価格以上の値上がりが期待できる場合があります。一方で、企業固有のリスク(経営の問題、事故、産出国の政情など)も考慮する必要があります。
バランスと分散の考え方
金融の専門家がよくアドバイスするのは、 「ポートフォリオ全体のバランス」 を考えることの重要性です。どんなに魅力的に見える資産でも、資産の大部分を一つのものに集中させるのはリスクが高いとされています。
一般的に、貴金属(金と銀を合わせて)への配分は、資産全体の10%から20%程度が適切な範囲とされることが多いようです。また、銀は金よりも価格変動が大きいため、貴金属の中でも金を中心にして、銀を補完的に保有するというバランスを取る考え方もあります。
経済状況による影響
銀価格は様々な経済要因に影響を受けます。
金利が上昇すると、利息を生まない銀の魅力は相対的に低下します。逆に金利が下がると、銀への関心が高まりやすくなります。
また、世界経済が減速すると工業需要が減る可能性があります。特に太陽光パネルや電気自動車の販売が鈍化すれば、銀需要にも影響が出るでしょう。
一方で、経済が不安定な時期には、安全資産としての銀への需要が高まることもあります。このように、銀は複数の側面を持つため、経済状況によって価格の動き方が変わることがあります。
まとめ:銀市場の現状と今後の展望
2026年2月現在の銀市場は、歴史的な上昇の後に激しい調整局面を迎えていますが、その背景には確かな構造的要因があります。5年連続の供給不足、太陽光発電・電気自動車・AIといった成長分野での需要拡大、そして支援的な金融政策環境が、銀価格を支える主要な柱となっています。
専門家の価格予測は41ドルから309ドルまで幅広く分かれていますが、多くの主要金融機関は65ドルから100ドルの範囲を見込んでいます。現在の75ドル前後という水準は、1月の最高値から調整した後の価格帯であり、専門家の多くが 「適正価値に近い」 と評価しています。
銀市場を理解する上で重要なのは、 「短期的なボラティリティと長期的なトレンドを区別すること」 です。1日で30%下落するような激しい値動きは確かにありますが、構造的な供給不足と工業需要の増加というトレンドは、今後数年にわたって続く可能性が高いと多くの専門家が指摘しています。
銀は金と並ぶ貴金属でありながら、より産業色が強く、経済成長の恩恵も受けやすい資産です。脱炭素化、電動化、デジタル化という世界的なメガトレンドが、銀の需要を構造的に押し上げているのです。
ただし、銀特有の高いボラティリティは十分に理解しておく必要があります。価格が激しく上下する特性があるため、短期的な値動きに一喜一憂せず、長期的な視点で市場を見ることが大切です。
今後注目すべきポイントとしては、金・銀比価の動き、太陽光発電とEV産業の成長ペース、FRBの金融政策、そしてCOMEXやLBMAなどの市場在庫の推移などが挙げられます。これらの指標は、銀市場の需給バランスを理解する手がかりとなります。
銀市場は今、歴史的な転換点にあるのかもしれません。工業需要の構造的な増加という新しい時代を迎える中で、銀がどのような価格推移を見せるのか、引き続き注目していく価値がある市場と言えるでしょう。
最新のコメント