
先週の市場を振り返るマーケットレポート 2025年4月第1週

今週のマーケットレポートでは、トランプ政権による「解放の日」と称した関税政策発表が市場に与えた影響を中心に解説します。この政策は2024年の大統領選挙でトランプ氏が再選されて以来、最も大きなインパクトを与えた経済政策といえるでしょう。
先週の市場を動かした最大のニュース
4月2日、トランプ大統領が行った「解放の日」演説で、世界中からの輸入品に最低10%の関税を課すと宣言しました。さらに、アメリカに高い関税を課している国々に対しては、同等の「相互的関税」を適用するとのこと。
主な関税率を見てみると、基本は10%ですが、中国からの輸入品は現行の関税に加えて10%上乗せで合計約54%、自動車輸入は一律25%、EUには20%、日本には24%、そして最も高いのがベトナムで46%となっています。180カ国以上が対象で、発表と同時に即日発効したのが特徴です。
また、「デ・ミニミス」と呼ばれる免税措置も5月2日に廃止されることになり、TemuやSheinなどの中国系オンライン小売業者にとっては大きな痛手になりそうです。
市場の反応はというと、予想通り大きな下落となりました。ダウ平均先物が約1.9%、S&P500先物が約2.7%、ナスダック先物が約3.2%下落。日経平均株価も3.2%下落して8ヶ月ぶりの安値をつけました。
グローバルなサプライチェーンに依存するアップルなどのテクノロジー企業や自動車メーカーの株価が特に大きく下落した一方で、イーロン・マスク氏がDOGE(政府効率化部門)から近く退任するという報道からか、テスラの株価は逆に5%以上上昇するという面白い動きも見られました。
世界各国の反応
中国商務省はすぐに声明を出し、「直ちに関税を撤回するよう」求め、対抗措置を取ると警告しています。EUのフォン・デア・ライエン委員長も「交渉が失敗した場合、さらなる対抗措置を準備している」と発表。
一方、カナダへの関税に関しては、アメリカ上院が超党派でこれに反対する決議を可決しました。これはトランプ政権の政策に対する共和党内からの珍しい分裂を示すものです。
日本政府は24%の関税を「遺憾」としつつ、除外を求める姿勢を示しています。特に自動車メーカーや電子機器メーカーは大きな影響を受ける可能性がありますね。
セクター別の影響
テクノロジーセクターでは、アップルなど中国やアジアのサプライチェーンに依存する企業が大きな影響を受けそうです。ウェドブッシュのアナリスト、ダン・アイブス氏は「これは最悪のシナリオよりも悪い」と評価しています。
自動車セクターでは、25%の関税が国内外のメーカーに大きな打撃となりそうです。ステランティスはすでにカナダのウィンザー工場の2週間閉鎖を発表しました。ある分析では、新車価格が最大15,000ドル上昇する可能性があるとの見方も出ています。
消費財セクターでは、ベトナムに対する46%の高率関税が、ナイキやアメリカン・イーグル、ウェイフェアなどの靴、家具、おもちゃを製造している企業に影響を与えそうです。
金融セクターでも、関税によるインフレ圧力が金利引き下げ期待を後退させ、また景気後退リスクが企業の取引活動に影響するとの懸念から、銀行株が下落しました。
コモディティと債券市場の動き
このような不安定な状況下で、金は安全資産として買われ、1オンス3,170ドル台と史上最高値をつけました。
原油価格は下落し、WTI原油先物は1バレル70ドル前後で取引されています。これは関税による世界経済の減速懸念と需要減少への警戒感からでしょう。
債券市場では、米国10年国債利回りが大幅に低下して4.05%台となりました。これは安全資産への資金移動と、経済減速懸念が金利上昇期待を和らげたことによるものと考えられます。
為替市場の動向
米ドルは関税発表後、主要通貨に対して下落しました。米ドル指数は0.7%以上下落して102.76を記録。EUR/USDは1.09台まで0.53%上昇、GBP/USDも1.31台まで0.45%上昇するなど、ドル安の動きが見られました。
これは関税政策が最終的にアメリカ経済に悪影響を与え、FRBの利下げを早める可能性があるとの見方が広がったためでしょう。
今後の見通しと投資戦略
関税政策はアメリカ国内のインフレ圧力を高める可能性があります。ベッセント財務長官は「市場の混乱はテクノロジー株の売り込みによるもので、関税によるものではない」と主張していますが、多くのアナリストは関税がスタグフレーションのリスクを高めると警告しています。
この状況下での投資戦略としては、市場の不確実性が高まる中、配当株や債券など防衛的な資産への配分を増やすことが検討されています。また、アメリカ国内での売上比率が高い企業は、関税の直接的影響を受けにくいとされています。セクター別では、金融、ヘルスケア、公益セクターなど、関税の影響を比較的受けにくいセクターが注目されていますね。
まとめ
トランプ政権の大規模な関税政策発表は、世界的な貿易戦争への懸念を高め、市場に大きな不確実性をもたらしました。特にアメリカと中国、EUの間での緊張が高まっており、報復措置の応酬が経済成長を減速させるリスクが指摘されています。
短期的には市場のボラティリティが高まると予想される一方、企業の対応力や政策の最終的な実施形態によっては、影響度が変わる可能性もあります。今は地政学的リスクに注意しながら、分散投資と長期的視点を持つことが重要だと思います。
今後数週間は、各国の具体的な対抗措置や企業の対応戦略、そして市場のさらなる反応を注視する必要がありそうです。また、5月の「デ・ミニミス」規制変更も大きな影響をもたらす可能性があり、引き続き状況を注視していきたいと思います。
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