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米国レストラン予約プラットフォーム戦争の実態|OpenTable・Resy・DoorDashの競争激化

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目次

アメリカで起きているレストラン予約の大変革

「今夜、あの人気レストランを予約したい」と思ったことはありませんか? 日本でも食べログやホットペッパーグルメなどの予約サービスが当たり前になりましたが、実はアメリカでは今、レストラン予約市場で激しい競争が繰り広げられています。

単なる「席の予約」だったはずのサービスが、いつの間にかクレジットカード会社やデリバリー企業を巻き込んだ、約900億ドル規模の外食産業における重要なインフラ争奪戦へと発展しているのです。

この記事では、OpenTable、Resy、DoorDashという三大プレイヤーがどのような戦略で競い合っているのか、なぜ金融機関が予約サービスに参入してきたのか、そして私たち消費者やレストラン側にどのような影響があるのかを、分かりやすく解説していきます。

米国レストラン予約市場で何が起きているのか

予約プラットフォームが単なる予約システムを超えた存在に

アメリカのレストラン予約市場は、かつてOpenTableが圧倒的なシェアを持っていました。しかし2010年代後半から状況は一変します。新興のResyが「トレンディで話題性の高いレストラン」を次々と獲得し、さらに2025年にはデリバリー大手のDoorDashが予約プラットフォームのSevenRoomsを12億ドルで買収しました。

今や予約プラットフォームは、単に「空いている席を予約する」だけの役割にとどまりません。お客さんの来店履歴、注文内容、支払金額などのデータを収集・分析し、レストランに対して経営改善のアドバイスを提供する 「データ駆動型マーケティングプラットフォーム」 へと進化しているのです。

クレジットカード会社が予約サービスを買収する理由

特に注目すべきは、金融機関の動きです。アメリカン・エキスプレス(Amex)は2019年にResyを買収し、JPMorgan ChaseはOpenTableと提携しています。

なぜクレジットカード会社が予約サービスに興味を持つのでしょうか? それは、年会費が800ドルから900ドルもする高級クレジットカードの会員を獲得・維持するためです。「人気レストランの予約が優先的に取れる」という特典は、高額な年会費を払ってでもそのカードを持ち続けたいと思わせる、強力な魅力になっているのです。

三大プレイヤーの戦略を詳しく見る

OpenTable:老舗の反撃戦略

危機からの復活

OpenTableは1998年創業で、オンライン予約の先駆者として知られています。2014年には旅行予約大手のBooking Holdingsに26億ドルで買収されました。現在は世界60,000以上のレストランと提携し、2025年には毎秒8件もの予約を処理するほどの規模に成長しています。

しかし、2010年代後半には急速にシェアを失う苦境に陥りました。2020年に就任したCEOのDebby Sooさんは「最初の2年間は謝罪ツアーだった」と振り返っています。主な敗因は、価格設定の硬直性、機能改善の遅れ、そして大企業病による顧客サービスの低下でした。

価格戦略の見直しと柔軟化

2020年以降、OpenTableは反撃に転じます。従来の「月額固定費+予約1件ごとの手数料」という硬直的な料金体系を見直し、レストランの規模や予約件数に応じた階層型プランを導入しました。月額150ドルから500ドルまでの幅を持たせ、さらにレストランの自社サイト経由での予約については手数料を免除するオプションも追加しています。

戦略的パートナーシップの強化

2025年には、Uber Eatsとの統合を発表しました。OpenTableの予約在庫がUber Eatsアプリにも掲載され、相互に顧客を送客し合う仕組みです。また、VisaやJPMorgan Chaseとも提携し、Chase Sapphire Reserve会員向けに人気レストランの限定テーブルを提供しています。

さらに驚くべきことに、OpenTableは高級レストランをResyから奪還するため、 40,000ドルから95,000ドルもの契約金 を支払っているとThe New York Timesが報道しています。この金額は都市や店舗の知名度によって変動するとのことです。

Resy:トレンディな店舗への特化戦略

「行きたい店」を押さえる戦略

Resyは2014年に創業し、OpenTableとは異なるアプローチで市場に参入しました。企業向けの接待レストランよりも、 「今話題になっている」「インスタ映えする」「シェフが有名」 といった、トレンドに敏感な若い世代が行きたがるレストランに特化したのです。

Union Square Hospitality Groupなど、ミシュラン星付きレストランを複数運営する著名グループを早期に獲得することで、「おしゃれなレストランならResy」というブランドイメージを確立しました。

価格破壊とソフトウェアの優位性

Resyの価格戦略はシンプルでした。OpenTableの「予約件数に応じた従量課金」を攻撃し、 月額固定費のみ という分かりやすい料金体系を打ち出したのです。予約が増えても追加料金がかからないため、人気店にとっては魅力的な選択肢となりました。

また、予約データに基づく高度な分析ツールを標準装備し、「どの時間帯の予約率が高いか」「どんなお客さんがリピートしているか」といった経営に役立つ情報をレストラン側に提供しています。

アメリカン・エキスプレス効果の最大化

2019年にAmexに買収されてからは、さらに成長が加速しました。Amex Platinum会員(年会費895ドル)向けに 「Global Dining Access Program」 を展開し、人気レストランの予約枠を一般公開の28日前、午前9時に会員限定で確保する仕組みを導入しています。

Amexの年次報告によれば、Resyクレジットを持つAmex会員は、通常会員よりも 25%以上多く外食に支出 しているとのことです。予約サービスが高額カード会員の維持に貢献していることがうかがえます。

2024年にはさらに、別の予約プラットフォームであるTockを4億ドルで買収し、約5,000店舗を追加しました。2026年夏には統合が完了する予定です。

DoorDash × SevenRooms:デリバリーと予約の統合

12億ドルの大型買収

2025年、デリバリー大手のDoorDashが、データ特化型予約プラットフォームのSevenRoomsを12億ドルで買収しました。SevenRoomsは2011年創業で、15,000以上のレストランと提携していました。

この買収の狙いは明確です。 デリバリーと店内飲食のデータを統合 することで、お客さんの「食行動」を包括的に把握しようというのです。

データ統合がもたらす価値

具体例で考えてみましょう。あるお客さんAさんが、とあるレストランからDoorDashで6回デリバリー注文をしたとします。そして初めて実際にお店を訪れて予約をしました。

従来であれば、レストラン側はAさんを「初来店のお客さん」として扱います。しかしSevenRoomsとの統合後は、 「7回目の利用客」 として認識できるようになるのです。これにより、常連客向けの特別なサービスを提供したり、より精緻なマーケティングを展開したりすることが可能になります。

レストランにとっては、お客さん一人ひとりの生涯価値(どれだけの金額を使ってくれるか)を正確に把握でき、デリバリー利用者を来店へと誘導する戦略も立てやすくなります。

高級カード会員向けサービスも展開

DoorDashもまた、Chase Sapphire Reserveと提携し、高級カード会員向けに排他的な予約枠を提供しています。ニューヨークの人気レストラン「The Corner Store」のオープン時には、DashPass会員になるために多くの人がアプリをダウンロードしたと報告されています。

クレジットカード会社が予約サービスに注目する本当の理由

高額年会費カード市場の競争激化

アメリカのプレミアムクレジットカード市場は、激しい競争にさらされています。Chase Sapphire Reserveの年会費は現在約800ドル、Amex Platinumは895ドル、Capital One Venture Xは395ドルといった具合です。

これらの高級カードの会員は、一般会員の 3倍から5倍もの年間支出 を行います。カード会社にとって、高額会員をいかに獲得し、そして維持するかは死活問題なのです。

「体験」が新しいステータスシンボルに

従来のクレジットカード特典といえば、空港ラウンジの利用権、ホテルのアップグレード、キャッシュバックやポイント還元などでした。しかし今、新たな特典として注目されているのが 「排他的なレストラン予約権」 です。

専門家は「今や外食は、『そこに行けた』と言えること自体が価値になっている」と指摘しています。人気レストランの予約が取れることは、一種のステータスシンボルとして認識され始めているのです。

単なるポイント還元よりも、「他の人が予約できない人気店に行ける」という希少性の高い体験の方が、高額な年会費を払う価値があると感じる消費者が増えているわけです。

データが生み出す新しい競争優位性

POSシステム統合による顧客プロファイル強化

三大プラットフォームのすべてが、 POSシステム(販売時点情報管理システム)との統合 を推進しています。POSシステムとは、レストランのレジや注文管理に使われるシステムのことです。

これにより、予約プラットフォームは以下のような詳細なデータを収集できるようになります。

  • 予約の頻度やキャンセル率
  • 注文した料理やワインの種類
  • お客さん一人あたりの支払金額
  • 滞在時間
  • レビュー投稿の頻度

OpenTableの機能例を見てみましょう。「Frequent Reviewer」というバッジは平均以上にレビューを投稿しているお客さんに、「High Spender」というバッジは平均以上の金額を使っているお客さんに付与されます。

レストラン側は、予約の時点でこうした情報を確認できるため、優良顧客を事前に識別し、特別なサービスを提供することが可能になるのです。

競合ベンチマーキング機能

OpenTableは加盟レストランに対し、 匿名化された競合店のデータ も提供しています。

例えば、「木曜日の夜、あなたのお店は2時間でテーブルを回転させていますが、近隣の同規模店舗の平均は1.5時間です。もう1回転増やせる可能性があります」といった分析結果を示してくれるのです。

このような高度な分析機能は、複数店舗を展開する大手ホスピタリティグループには非常に有用です。ただし、小規模な個人経営のレストランにとっては「使いこなす余裕がない」という声もあります。

データの潜在的な活用可能性

レストランの予約・来店データには、将来的にさまざまな活用可能性があります。

ターゲット広告への応用
高額を支出する顧客層を特定し、食品・飲料ブランドが効果的な広告を配信できるようになります。

トレンド予測
どんな料理やメニューが人気なのかをリアルタイムで把握し、新メニュー開発や新規出店の立地選定に活かすことができます。

金融商品開発
レストランの売上データを分析することで、より正確な与信審査が可能になり、飲食店向けの融資サービスなどにも応用できます。

特にDoorDashとSevenRoomsの統合は、デリバリーと予約の両方のデータを持つことで、 お客さんの食行動を最も包括的に把握 できる立場にあります。これは将来的に、GoogleやMetaのような広告プラットフォームに匹敵する可能性を秘めているのです。

レストランとお客さんへの影響

レストラン側の悩み:複数プラットフォーム併用の苦悩

マンハッタンにあるパリ風ステーキハウス「Lelay Vagabond」の事例は興味深いです。このレストランは2025年4月の開業時、予約システムを一切導入せず、完全に飛び込み客のみを受け入れる方針でした。

しかし現実には、多くのお客さんが予約を期待していたため、わずか数週間で方針を転換せざるを得なくなりました。現在はOpenTableとResyの 両方を併用 しています。

オーナーは「1年後にどちらが良いか判断する。実際にお客さんを呼んでくれるなら、多少高くても構わない」とコメントしています。

複数プラットフォーム運用の課題

複数のプラットフォームを使うことには、いくつかの課題があります。

  1. オーバーブッキングのリスク:同じ時間帯の席を両方のプラットフォームで開放すると、予約が重複してしまう可能性があります。
  2. 管理コストの増加:それぞれのプラットフォームの操作方法を習得し、データが分散してしまいます。
  3. 手数料負担の増加:複数と契約することで、月額コストが300ドルから1,000ドル以上になることもあります。

飲食業界は元々利益率が低く(平均営業利益率5〜10%)、こうした手数料負担は決して軽くありません。小規模レストランのオーナーからは「すべての高度機能を使う時間がない。重要なのは使いやすさ、集客力、コストだけ」という声も聞かれます。

お客さん側の体験:予約の取りづらさ

人気レストランの予約が公開されると、わずか数秒で満席になってしまうという現象が起きています。これには複数の要因があります。

クレジットカード会員への優先枠
前述の通り、高級クレジットカード会員には一般公開前に予約枠が提供されることがあります。一般のお客さんがアクセスできる頃には、すでに多くの席が埋まっているのです。

ボット予約の問題
人気店の予約枠を自動で取得し、転売するボット(自動プログラム)の存在も指摘されています。各社は対策を強化していますが、いたちごっこが続いているのが現状です。

プラットフォームの分散
お客さんの立場からすると、「このレストランはOpenTableで予約できるのか、Resyなのか、それともDoorDashなのか」を調べる手間が増えています。

一方で、プラットフォーム側は「お客さんはプラットフォームではなくレストランに忠誠心を持つ」ことも認識しています。つまり、どのプラットフォームでも同じ店が見つかる状態では、排他性の価値が低下してしまうというジレンマを抱えているのです。

今後の展開と可能性

市場統合の可能性

現在の三つ巴の競争状態が長期的に続くかどうかは不透明です。いくつかのシナリオが考えられます。

大手による買収・統合
Booking Holdingsが競合のResyやTockを買収しようとする可能性があります。ただし、独占禁止法の規制が大きな壁となるでしょう。

ビッグテックの参入
Google、Apple、Metaなどの巨大テック企業が本格参入する可能性もあります。Googleマップは既にレストラン予約機能を一部で展開しており、これを拡大する動きもあり得ます。

分散型モデルの台頭
ブロックチェーン技術を用いた非中央集権型の予約システムが登場する可能性もあります。レストランが仲介手数料を削減できる一方、技術的なハードルは高いでしょう。

隣接市場への拡大

レストラン予約で培ったノウハウは、他の分野にも応用できます。

イベント・エンターテインメント
コンサート、スポーツ観戦、劇場などのチケット予約にも展開できる可能性があります。Resyは既に一部のイベントで実験を行っています。

海外展開
アジアや欧州市場への進出も考えられます。特に中国や日本は外食文化が成熟しており、潜在市場規模は大きいです。ただし、中国の大众点评や日本の食べログなど、現地の強力なプレイヤーが既に存在しています。

規制リスクの顕在化

今後5年以内に、何らかの規制強化が行われる可能性もあります。

独占禁止法の懸念
OpenTableやResyが特定の都市で支配的な地位を占めた場合、公正取引委員会の調査対象となる可能性があります。特に「レストランへの高額な乗り換え金の支払い」は、競争を阻害する行為と見なされるリスクがあります。

データプライバシー
お客さんの食行動データの収集に対し、プライバシー保護の観点から規制が導入される可能性もあります。カリフォルニア州では既にCCPA(消費者プライバシー法)が施行されており、他の州でも同様の動きが広がる可能性があります。

まとめ:レストラン予約市場の未来

米国のレストラン予約市場は、単なる「席を予約するサービス」から、 データとテクノロジーを活用した総合的なマーケティングプラットフォーム へと大きく変貌を遂げています。

OpenTable、Resy、DoorDashという三大プレイヤーは、それぞれ異なる戦略で競い合っています。OpenTableは老舗として柔軟な価格戦略と戦略的提携で反撃し、Resyはトレンディな店舗への特化とアメリカン・エキスプレスの財務力を武器にし、DoorDashはデリバリーと予約のデータ統合という独自の強みを活かしています。

クレジットカード会社が予約サービスに参入している背景には、高額年会費カードの会員を獲得・維持するという明確な目的があります。「人気レストランに優先的に予約できる」という体験は、新しいステータスシンボルとして価値を持ち始めているのです。

レストラン側にとっては、複数プラットフォームの併用による手数料負担や管理コストの増加が課題となっています。一方、お客さん側にとっては、予約の取りづらさや、どのプラットフォームを使えば良いのかという選択の複雑さが問題です。

今後は、市場の統合、ビッグテックの参入、規制強化など、さまざまな変化が予想されます。この市場はまだ初期段階にあり、米国の外食産業の80%以上は依然として電話予約や飛び込みで運営されています。オンライン化の余地は大きく、今後も年率10〜15%の成長が見込まれています。

レストラン予約プラットフォームは、テクノロジー、金融、消費者行動が交差する興味深い分野です。単なる予約システムではなく、「誰が、いつ、何を食べたか」という膨大なデータを握るプラットフォームへと変容していく過程は、今後も注目に値するでしょう。

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