
Zillow Group(ジロー)の投資判断を徹底解説|2025年最新の業績と訴訟リスクを分析
はじめに
不動産情報サイトで物件を探したことはありますか?アメリカでは「Zillow(ジロー)で検索する」という表現が動詞として使われるほど、同社のプラットフォームは日常生活に浸透しています。日間アクティブユーザーは何と 2億7700万人 。アメリカ最大の不動産情報プラットフォームとして圧倒的な存在感を示しています。
しかし、2025年現在、Zillow Group(ナスダック:ZG、Z)の株価は苦戦を強いられています。52週高値の90ドルから約22%下落し、70ドル前後で推移。同期間でS&P500指数が26%上昇したことを考えると、明らかなアンダーパフォーマンスです。
この記事では、Zillowの ビジネスモデル 、直面している 法的リスク 、そして 投資判断 について、初心者の方にも分かりやすく徹底解説します。「今は買い時なのか?」「それとも避けるべきなのか?」——あなたの投資判断の参考になる情報をお届けします。
Zillowのビジネスモデル|どうやって稼いでいるの?
主な収益源は3つ
Zillowは基本的に 無料 で使える不動産情報サイトです。では、どうやって収益を上げているのでしょうか?主な収益源は次の3つです。
①Premier Agent(プレミアエージェント)|最大の収益源
これがZillowの 中核ビジネス です。仕組みはこうです。
不動産エージェント(日本でいう不動産仲介業者)は、特定の地域(郵便番号単位)で物件を探している人の 連絡先情報(リード) を獲得するために、Zillowに料金を支払います。いわば「広告枠の入札」のようなものですね。
具体的な金額はどのくらいでしょうか?アメリカの住宅取引では、購入者側のエージェントが受け取る手数料は、住宅価格の中央値で約1万2000ドル(約180万円)。Zillowは、そのうち 最大40% 、つまり約5000ドル(約75万円)を受け取る仕組みになっています。
2025年第3四半期の決算では、総売上高は6億7600万ドルで、前年比16.35%増加しました。Premier Agentはこの成長を支える主力事業です。
ただし、現在のアメリカの住宅市場は 「affordability crisis(購入可能性危機)」 と呼ばれる状況にあります。住宅価格の高騰と高金利により、取引件数が歴史的な低水準に落ち込んでいるのです。これはZillowの収益に直接的な悪影響を与えています。
②賃貸広告事業|急成長中だが訴訟リスクも
2025年2月、Zillowは競合のRedfin(レッドフィン)に 1億ドル を支払い、25戸以上の集合住宅の広告事業を買収しました。これにより、Rent.com、ApartmentGuide.com、Hotpads、Trulia、Realtor.comといった主要な賃貸サイトすべてにZillowの広告が掲載されるようになりました。
これは大きな戦略的買収に見えますが、実は 重大な法的リスク を抱えています。
2024年9月、FTC(連邦取引委員会)と5つの州の司法長官が、ZillowとRedfinを 独占禁止法違反 で提訴したのです。訴状によると、両社とCoStarの3社で、賃貸リスティング市場の 収益の85% を支配しているとされています。
FTCは、この独占状態が広告料金の上昇を招き、最終的には 賃借人の家賃負担増 につながると懸念しています。この訴訟は1~2年かかる可能性があり、結果次第では以下のような事態も考えられます。
- 買収取引の取り消し
- 1億ドル投資の損失
- 賃貸広告事業の成長戦略への重大な影響
- 罰金や事業活動の制限
③住宅ローン事業|小さなプレーヤー
住宅ローン市場は非常に競争が激しく、多くの金融機関がひしめき合っています。Zillowはこの分野では 「非常に小さなプレーヤー」 に過ぎません。
さらに、2025年11月(つい最近!)、HousingWireの報道によると、Zillowは住宅ローン事業での 「違法なキックバック」 で新たな訴訟に直面しています。この訴訟は、住宅ローン事業の収益性と評判に影響を与える可能性があります。
Zillowの技術力|AIとデータが生み出す競争優位性
Zestimate(ゼスティメイト)|AI価格推定の先駆者
Zillowの最も有名な機能が 「Zestimate」 です。これは、AIを使って住宅の推定価格を算出するツールで、何と 2006年から存在 しています。つまり、「AI」という言葉が流行する遥か前から、Zillowは機械学習を活用していたのです。
現在は「neural Zestimate」として、最新のニューラルネットワーク技術を使用しています。その精度はどのくらいでしょうか?
- 公開中の物件 :中央値誤差率 2%
- 非公開物件 :中央値誤差率 7.1%
ニューヨーク大学の研究によると、Zestimateを利用することで、売主の利益が約4%向上するという結果も出ています。競合のRedfinも類似のツールを提供しており、これは業界標準として確立されています。
投資家の視点から見ると、Zestimateの真の価値は データネットワーク効果 にあります。Zillowは 1億6500万件 という膨大な住宅データベースを持っており、これは競合が簡単に真似できる資産ではありません。ユーザーが増えるほどデータが蓄積され、精度が向上し、さらにユーザーが増える——という好循環が生まれるのです。
ただし、Zestimate自体は直接的な収益化ツールではなく、あくまで トラフィック獲得ツール である点には注意が必要です。
生成AI機能|新たなユーザー体験
Zillowは最新の生成AI技術も積極的に取り入れています。
- ChatGPT統合 :自然な会話形式で物件検索
- Sky Tour :ドローン写真から3D画像を生成
- バーチャルステージング :空室をAIで家具配置した状態に変換
これらの機能は、ユーザー体験を大幅に向上させ、プラットフォームの 粘着性 を高める可能性があります。ただし、これらがどのように直接的な収益につながるのかは、まだ明確ではありません。
Zillowが直面する法的リスク|投資判断に影響する3つの訴訟
①FTC独占禁止訴訟|賃貸広告市場の85%を支配?
前述したように、2024年9月にFTCと5つの州の司法長官が、ZillowとRedfinを独占禁止法違反で提訴しました。
FTCの主張 は明確です。「Zillow、Redfin、CoStarの3社が、賃貸リスティング市場の収益の約85%を支配している。この独占により広告料金が上昇し、最終的には消費者(賃借人)の家賃負担が増える」というものです。
投資家にとってのリスク を整理すると以下のようになります。
- 訴訟期間 :1~2年
- 潜在的損失 :1億ドルの投資 + 将来の賃貸広告収益
- 最悪シナリオ :買収取引の取り消し、事業分離命令、罰金
この訴訟は 高リスク と評価せざるを得ません。
②Compass訴訟|リスティング独占力への挑戦
2025年、大手不動産仲介会社のCompass(コンパス)が、Zillowに対して反トラスト(独占禁止)訴訟を提起しました。この訴訟の背景には、 「Clear Cooperation(明確な協力)」 という業界ルールがあります。
背景の整理
- 2019年、NAR(全米リアルター協会)が「Clear Cooperation」ポリシーを導入しました。これは、物件を公開マーケティングする場合、1営業日以内にMLS(不動産情報共有システム)に登録しなければならないというルールです。
- 2025年4月、ZillowがNARのポリシーを模倣した規則を自社プラットフォームに導入しました。
Compassの主張
「Zillowは、エージェントと売主に対して、24時間以内にZillowに物件を掲載しないと、プラットフォームから締め出すという行為をしている。これは独占的で不公平だ」
Zillowの反論
「物件を公開マーケティングするなら、すべてのプラットフォームで公開すべきだ。一部のプラットフォームだけで選択的にマーケティングするのは不公平だ」
投資家への示唆
この訴訟の判決は 2025年11月(まもなく!) に予定されています。Compass側が勝訴すれば、Zillowのリスティング独占力が弱まり、データ優位性が損なわれる可能性があります。
③住宅ローンのキックバック訴訟|評判リスク
前述したように、2025年11月に報道されたばかりの新しい訴訟です。住宅ローン事業での「違法なキックバック」が問題視されています。
住宅ローン事業はZillowにとって小さな事業ですが、 評判リスク は無視できません。不動産は消費者にとって人生最大の買い物です。信頼が損なわれれば、プラットフォーム全体への影響も懸念されます。
財務パフォーマンス|黒字転換も利益率は低い
2025年第3四半期の業績(2025年9月30日終了)
Zillowの最新の四半期業績を見てみましょう。
売上高 :6億7600万ドル(前年比+16.35%)✅
営業費用 :4億9200万ドル(前年比+1.44%)✅
純利益 :1000万ドル(前年比+150.00%)✅
純利益率 :1.48%(前年比+143.02%)✅
EPS(1株当たり利益) :0.44ドル(前年比+25.71%)✅
EBITDA :2400万ドル(前年比+214.29%)✅
ポジティブな点
- 二桁の売上高成長 :16.35%増は素晴らしい成長率です。
- 黒字転換 :純利益が前年の400万ドルから1000万ドルに増加しました。
- 営業レバレッジの改善 :売上高の成長率が営業費用の成長率を大きく上回っており、効率が向上しています。
懸念事項
- 極めて低い純利益率 :1.48%という利益率は、ビジネスの収益性が脆弱であることを示しています。
- 株価のアンダーパフォーマンス :年初来で約22%下落。同期間のS&P500が26%上昇したことを考えると、大幅な出遅れです。
- 配当なし :利益を株主に還元する余裕はまだありません。
業界構造の変化|手数料モデルが変わる
NAR和解の影響(2024年)
2024年、アメリカ不動産業界に大きな変化がありました。NAR(全米リアルター協会)が、購入者エージェントの手数料に関する独占禁止訴訟で和解したのです。
従来、アメリカの不動産取引では、総手数料(住宅価格の約6%)を売主が負担し、それを売主側エージェント(3%)と購入者側エージェント(3%)で分け合うのが一般的でした。
しかし、新しいルールでは、購入者が自分のエージェント手数料を直接交渉することが一般的になりつつあります。
Zillowへの影響は?
この変化は、Zillowにとって 悪いニュース です。
- 手数料の圧縮 :エージェントの手数料が下がれば、Zillowが受け取る紹介料(手数料の最大40%)も減少します。
- リード価値の低下 :エージェントにとってリードの価値が下がれば、Premier Agentへの加入意欲も低下します。
住宅市場の構造的課題
ZillowのCEOは、アナリストとの会議でこう述べています。
「私たちのエコノミストが言うには、住宅市場が劇的に改善することは、当面期待できないだろう」
根本原因 は以下の3つです。
- 購入可能性危機 :住宅価格の高騰と高金利により、多くの人が住宅を購入できない。
- ロックイン効果 :既存の住宅所有者は、低金利のローンを手放したくないため、売却を躊躇している。
- 供給不足 :新規建設が需要に追いついていない。
投資家への示唆
市場の回復には時間がかかります。Zillowの短期的な成長は限定的ですが、市場が正常化した時には 大きな反発 が期待できます。
競合環境|RocketとRedfinの統合が脅威に
主要な競合企業
Zillowの主な競合は以下の企業です。
- Redfin(レッドフィン) :現在、Rocket Companiesによる買収手続き中
- Realtor.com :NAR系列の老舗サイト
- CoStar Group :賃貸市場で強い
Rocket Companiesの戦略
注目すべきは、 Rocket Companies(ロケット・カンパニーズ) の動きです。Rocketは元々、住宅ローン最大手として知られていましたが、現在Redfinを買収中です。つまり、 住宅ローンから不動産ポータルへの垂直統合 を進めているのです。
一方、Zillowは逆の方向、つまり 不動産ポータルから住宅ローンへの水平展開 を試みています。
両社の目指すゴールは同じです。それは 「ワンストップ不動産プラットフォーム」 ——物件検索から住宅ローン、保険、決済まで、すべてを一つのプラットフォームで完結させることです。
アナリストの評価と最新ニュース
バーンスタインの評価(2025年11月12日)
投資銀行のバーンスタインは、訴訟リスクが報じられる中でも、Zillowに対して 「Outperform(アウトパフォーム)」 レーティングを維持しています。
これは、「訴訟リスクは認識しているが、長期的な事業価値は高い」という判断です。プロのアナリストも、Zillowの基本的な競争優位性を評価しているのです。
見通しのアップグレード(2025年10月)
Fast Companyの報道によると、Zillowは3週間前に見通しを 「アップグレード」 し、400以上の住宅市場の価格予測を発表しました。経営陣は慎重ながらも楽観的な姿勢を示しています。
投資判断|今は買い時なのか?
Zillowの強み
- ✅ 圧倒的なトラフィック :日間2億7700万ユーザーという圧倒的な規模
- ✅ データ資産 :1億6500万件の住宅データベースは簡単に真似できない
- ✅ ブランド認知 :「Zillow」は動詞化されるほどの浸透度
- ✅ AI技術 :Zestimateは業界標準として確立
- ✅ 黒字転換 :2025年第3四半期で純利益1000万ドル
Zillowの弱み
- ❌ 低利益率 :純利益率1.48%は極めて低い
- ❌ 市場依存 :住宅市場の循環性に脆弱
- ❌ 手数料圧力 :NAR和解による収益モデルへの圧力
- ❌ 訴訟リスク :複数の重大な法的課題
- ❌ 競合激化 :RocketとRedfinの統合による脅威
機会(チャンス)
- 🔵 市場回復 :住宅市場正常化時の大幅な反発が期待できる
- 🔵 賃貸事業 :訴訟リスクはあるが、市場統合による価格決定力の向上
- 🔵 AI統合 :ChatGPT統合などによる新たな収益化経路
- 🔵 垂直統合 :住宅ローン、保険、決済サービスの拡大
- 🔵 データ収益化 :不動産データの新たな活用方法
脅威(リスク)
- 🔴 FTC訴訟 :賃貸事業の中核に関わる独占禁止訴訟
- 🔴 キックバック訴訟 :住宅ローン事業の評判リスク
- 🔴 Compass訴訟 :リスティング独占力への脅威(11月判決予定)
- 🔴 長期市場低迷 :住宅市場の構造的問題
- 🔴 規制強化 :不動産業界全体への監視強化
投資期間別の推奨アクション
短期(3~6ヶ月):🟡 中立(HOLD)
理由
- 複数の訴訟判決待ち(特にCompass訴訟が11月に判決予定)
- 住宅市場の改善が見られない
- 株価は52週安値(56.63ドル)のサポートレベルを維持しているが、上昇の触媒が不明確
推奨アクション
- 既存保有者 :ポジションを維持し、訴訟の進展を注視する
- 新規投資家 :訴訟の結果を待つべき
中期(6~18ヶ月):🟢 慎重な買い(CAUTIOUS BUY)
理由
- バーンスタインのアウトパフォームレーティングを支持
- 株価は52週高値から22%下落しており、割安感がある
- 市場回復時の 最大受益者 の一つになる可能性が高い
推奨アクション
- 段階的なポジション構築(一度に全額投資しない)
- FTC訴訟の和解や取り下げは大きなポジティブ触媒になる
- 目標株価 :85~90ドル(52週高値近辺)
長期(18ヶ月以上):🟢 買い(BUY)
理由
- 不動産デジタル化のメガトレンドは不可逆的
- データネットワーク効果は時間とともに強化される
- 住宅市場は必ず回復する(サイクル事業の本質)
- AIとデータ資産の価値は現在過小評価されている
推奨アクション
- ポートフォリオの 5~10% 程度の配分が適切
- ドルコスト平均法(毎月定額購入)での積立が有効
- 目標株価 :100~120ドル(市場正常化シナリオ)
リスク管理の目安
ストップロス :55ドル(52週安値近辺で設定)
短期アップサイド :90ドル
長期アップサイド :120ドル
リスク・リワード比 :1対2.5(魅力的な水準)
監視すべき重要イベント
近々のカタリスト(きっかけ)
- 2025年11月 :Compass対Zillow訴訟の判決
- 2026年2月 :2025年第4四半期決算発表
- 2026年前半 :FTC訴訟の進展
- 継続的 :住宅市場の取引量と金利動向
ポジティブシグナル(買いのサイン)
- ✅ FTC訴訟の和解または取り下げ
- ✅ 住宅金利の低下(現在7%台→6%以下へ)
- ✅ 住宅販売戸数の回復
- ✅ 新たなAI収益化モデルの発表
ネガティブシグナル(売りのサイン)
- ❌ FTC訴訟での敗訴
- ❌ 1億ドルのRedfin取引の取り消し命令
- ❌ 住宅市場のさらなる悪化
- ❌ 追加的な規制調査の開始
まとめ|「良い会社を悪い時に買う」機会かもしれない
Zillow Groupは、アメリカ不動産テック業界の圧倒的リーダーとして、強力な競争優位性を持っています。1億6500万件の住宅データベース、2億7700万人の日間アクティブユーザー、20年間で構築されたブランドとネットワーク効果——これらは一朝一夕に真似できるものではありません。
しかし、現在は「完璧な嵐」に直面しています。
- 市場環境 :住宅市場の歴史的低迷
- 規制リスク :複数の重大な訴訟
- 業界変革 :手数料構造の変化
それでも、これらは 一時的な逆風 である可能性が高いと考えられます。投資の世界には、「良い会社を悪い時に買う」という格言があります。まさに今のZillowは、そのような状況にあるのかもしれません。
最終的な投資判断
- リスク許容度が高い長期投資家 には推奨
- ポートフォリオの適切な割合(5~10%) に留める
- 訴訟リスクを十分に理解 した上で投資する
- 段階的な購入 でリスクを分散する
投資は自己責任です。この記事の情報を参考に、ご自身の投資目標とリスク許容度に合わせて判断してください。市場状況は日々変化しますので、最新情報を常にチェックすることをお勧めします。
あなたの投資判断の一助となれば幸いです。
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